投稿日:2022年08月08日
いわゆる新型コロナウィルス感染拡大第7波の最中、自分が感染することになった。仕事がら対面の打ち合わせが多く、普段から感染には気をつけていたものの、今回は避けられなかった。しかしながら、それまでは、コロナに感染するのは別の人(あちら側の人)という、どちらかというと他人ごとという意識があったと反省を込めて振り返る。
数日前からあった喉のいがらっぽさが痛みに変わり、よもやまさかとの思いでかかりつけ病院で受診。そこでPCR検査の結果、陽性と判定され、私の生活は大きく変わった。寝具や着替え、生活用品を部屋に持ち込み、自室が隔離病棟となった。食事は部屋の前に置いてもらい、LINEで連絡を受ける。家族への感染を避けるため、家族との接触は一切ない。
現在の規定では発症から10日間は自宅隔離が基本であり、これは受け入れざるを得ない事態だ。幸い、発熱はほとんどなく、炎症を抑える薬の効果もあって、一人での生活はさほど苦にならない。(家族の差し入れがあってのことではあるが…)
こうした環境下、部屋から一歩も外に出られない中での10日間の過ごし方は、本来的には、ぼーと過ごすことがある意味で「静養」にはなる。ただ、私の様々な関りの中において「10日間」隔離は支障が大き過ぎる。かといってルールには従わなければならない。こうした究極の環境下で、威力を発揮したのがITツールだ。
私の「10日間」の隔離と管理組合活動を時系列でみると、次のようになる。
自宅隔離前日 :管理組合団体セミナー講師(喉痛みあるもオンラインセミナーで影響なし)
自宅隔離1日目:PCR検査陽性。発熱36.8度。この日の東京都内で陽性判定21,958名の内の一人
自宅隔離2日目:管理組合決算理事会(元々、オンラインでの開催予定のため影響なし)
自宅隔離3日目:不動産関係勉強会運営者(元々、オンラインでの開催予定のため影響なし)
自宅隔離4日目:管理組合総会(元々、「対面」での総会予定だったが、急遽1名(理事長である私)のみオンライン参加に設定してもらい、「大規模修繕工事」進行に影響なし)
自宅隔離6日目:管理組合顧問先理事会(元々、対面での理事会予定だったが、ハイブリッド方式に変更し出席可能となる。オンライン理事会を模索していた組合にもよい機会となった。)
自宅隔離8日目:管理組合臨時理事会(決算理事会後、管理会社変更案件で総会前の理事会開催が不可欠となり急遽開催。オンラインで実施としたため影響なし)
隔離された部屋を一歩も出ることなく、管理組合活動やマンション管理士としての活動ができた。その陰にあったITツールの威力は絶大だと実感する。もっとも、これは単にITツールの存在だけではなく、日頃から管理組合側での受け入れ態勢やIT化への意識があってこそだ。これらが相まって、自主隔離中に上記の活動が実現できたことは間違いない。
今、法律的には2類の新型コロナウィルスを、季節性インフルエンザと同様の5類に移行する議論がなされており、今後、新型コロナの位置づけが変わることになるかもしれないが、変わったとしても、ウィルスとしての感染力が弱くなるわけではない。管理組合は複数の関係者が関わって運営していくものであり、人に感染させない体制は不可欠である。
今回、ウィズコロナ時代の円滑な管理組合運営において、ITの活用を徹底していく必要性を考えるよい機会になった。
投稿日:2022年08月05日
東京都港区の分譲マンションセミナーでは今回マンションでの防災をテーマとすることになり、「マンションでの防災活動はこれだ! ~災害に備えて今こそ、一歩踏み出そう~」と題する講演を7月30日、オンライン配信により行いました。マンションでの防災活動の必要性については以前から指摘されてきましたが、セミナーではマンションでの防災活動が進まない実態や、なぜ今マンションでの防災活動なのか、災害時マンションで何が起きるのかなど最新の情報を提供し、改めて参加者で共有しました。そのうえで地震編と風水害編に分けて様々な取り組みを提案しました。地震編ではマンションでの防災活動のロードマップ、防災活動のために適した組織の検討、マンションでの防災活動の基本7原則などを取り上げました。続く風水害編では気候変動で大規模な風水害が発生する昨今、マンションにおいても決して他人ごとではなく、積極的に取り組む必要性があること共有したうえで、マンションで想定される風水害被害やマンションでの風水害対応の基本7原則などを取り上げました。一例として、土のうは浸水防止のために使用することは最も簡単な止水対策ですが、浸水が想定される際に、重い土のうを複数個、短時間に誰が設置するのかといったマンパワーの問題。夜間や早朝など管理会社を頼れないことも忘れてはなりません。そう考えると、マンションでは土のうよりも簡易的な止水板の方が災害時に対応しやすいという点も提案させていただきました。また止水板設置の際は止水箇所に優先順位をつけることも必要で、当然マンションの心臓部分の「電気設備」は最優先として止水性能の高い種類の止水板で対応することも提案しました。最後にコロナ禍でも密にならずにできる防災訓練メニューを紹介して締めくくりました。
★マンションでの防災活動は、災害が起きた時では遅いのです。今できることから、一つひとつ取り組んでいくことをマンションに居住する皆さんにお願いしたいといつも思っています。
投稿日:2021年11月29日
公益財団法人まちみらい千代田の広報紙「まちみらいニュース」令和3年8月号にて「標準管理規約改正」のポイントについて紹介しました。新型コロナウイルス感染拡大へのWEB理事会、総会などITの活用や給排水管など専有部分と一体化した部分の管理、その他、捺印の廃止など社会の変化を受けての対応などが改定のポイントです。今回の改定は今の時代の理事会運営のうえでは重要なことが多く、一考の価値があるものです。これを機に管理組合の実情に合わせた改定を考えてみませんか。
投稿日:2021年08月30日
東京オリンピック開催前から急拡大している新型コロナウィルス感染拡大の勢いが止まりません。そんな中で、私が顧問を務める2つの管理組合でこの7月、8月と続けざまに陽性者が出てしまいました。それも理事会が終わった後に、発熱し、PCR検査の結果、陽性であることが判明したものですから、理事会出席者の間では動揺が拡がりました。そのうちの一つの組合の理事さんは入院したとの報告がありました。
幸い、理事会の出席者は全員マスク着用でしたから、私も含め全員、「濃厚接触者」には該当せず、他に陽性者が出ることはなく、理事会がもとで感染が拡大する最悪の事態は避けることができました。しかし、こんな身近なところまで感染が拡がっているとはと、驚くとともに、今までより気を引き締めなければいけないと思うようになりました。
その3週間後、理事長から一本の電話がありました。理事会後に入院された方が亡くなられたと…。この知らせにはショックを隠せませんでした。報道番組では重症化した後にたどる光景をさんざん見させられましたが、こんな身近なところで悲しいことが起きていることに、新型コロナウィルスの怖さを改めて感じさせられました。
昨年4月の第1波のときは未知のウィルスの怖さと感染拡大防止のための理事会での対策として
①広めの会場で換気をよくし、三密を避けた理事会開催にする。
②理事会前に検温、アルコール消毒を励行する。
③当然、全員がマスク着用で臨む。
④できる限り、効率よく短時間で終わらせる。
こんな注意を払ってきましたが、今回の第5波ではそれだけでは十分でないのかと、考えさせられました。もはや今の状況が続く限り、当面は「対面」での理事会は避けるべきで、ZOOMなどを活用したオンライン理事会としなければならないということを強く感じた次第です。折しも6月の標準管理規約の改正ではITを活用したWEB理事会・総会が新たに規定されました。
感染拡大は遠い世界の話ではなく、すぐ身近な理事会でも発生すること、今の状況を甘く見ることなく、少しでもリスクを避けた管理組合運営を図らなければならないとの思いを強くしました。
投稿日:2021年04月29日
マンションでの防災活動はどちらかというと地震に対応に重点がおかれていますが、マンションでは風水害への対応も重要です。2019年の台風19号では多摩川が増水し、武蔵小杉のタワーマンションなどへ浸水があったことは記憶に新しいところです。風水害に備えて「タイムライン」を作ることが呼びかけられていますが、マンションでは「タイムライン」をどのように考え作ればよいのか。そのうえでマンションで、風水害に対応するうえで重要なことは何か。平常時から何をするべきかなどの留意点を具体的に紹介しています。台風やゲリラ豪雨などの風水害は、喉もと過ぎれば忘れがちですが、その時になってからでは間に合いません。これを機にマンションで風水害も意識して対応されることを期待します。
資料・パンフレット|東京都マンションポータルサイト (tokyo.lg.jp)
投稿日:2020年12月01日
マンションよもやま話として連載のコラムで「冬に向けたマンションでの感染対策7か条」と題して寄稿しました。まさに新型コロナウィルス感染拡大第3波が強烈な勢いで押し寄せる中で、マンションでのこの冬の新型コロナウィルスを乗り切るための方策についてお伝えしています。対策としては「飛沫対策」と「接触」対策ですが、「飛沫対策」としては①共用部分を通る時のマスク着用をルール化する。(掲示の徹底) ②エレベータは少ない人数で乗る。(混んできたら次まで見送る) ③エントランス、廊下、エレベータかご内などでの会話は控えめに。 ④集会室を利用する際は人数、座席間隔、換気などに配慮する。 ⑤発熱やせき、体のだるさなど体調が悪いときは自室内に留まる。もう一つの「接触対策」としては ⑥エレベータホールなどへアルコール消毒液を設置する。⑦エントランス操作盤やドアノブ、エレベータ操作ボタンなど接触部分の消毒です。(※日常清掃の範囲でどこまで実施するか、費用対効果も含め管理会社との協議が重要)
★どれも当たり前のことと言えば、それまでですが、なかなかそれができないことがあるので、意識することが重要です。また、帰宅後の石鹸での手洗いは感染予防の基本ですので、これらをマンション居住者が協力して行うことで、この冬の感染拡大を防ぐことができると言えます。
投稿日:2019年09月16日
練馬区防災学習センター主催の中高層住宅向け防災講習会(9月7日、11日、13日)で昨年に続き、講師を務めました。今年のテーマはマンションの「設備の防災対策」と災害時のエレベータの落とし穴、「閉じ込めた対策」です。前半の設備の防災はややもすると忘れられがちな対応ですが、給排水設備のように損傷すると生活継続ができなくなる私たちにとって非常に影響が大きい問題です。このことを共有し、その対応策を考えました。後半はエレベータの閉じ込め対策についてです。2009年に地震時管制運転機能が義務化され、一件安全性は高まったように見えますが、この機能があるから絶対閉じ込めがないとは言い切れません。またかご内のインターホンがいつでも監視センターと通話ができるというのは幻想です。通信障害が発生した場合、かごの中から外部に閉じ込め等の緊急事態を知らせたくても、知らせることができない事態が発生する可能性があるのです。これらの問題について講習会では、かごの中のグループとかごの外のグループに分かれ、エレベータに閉じ込められた際、それぞれがどう対応すればよいのか。また平常時から閉じ込めリスクを回避するためにどのような対策をとればよいのか、ワークショップ形式で実戦さながらに体験し、有効な対応策を参加者で共有しました。
★エレベータ閉じ込めなんてないだろうと考えるのは安易すぎます。直下型地震など広域災害の場合にすぐに救助に来られなかったり、状況によっては数日間も閉じ込められる可能性すらあるのです。身近に潜む危険ですが、なかなか真剣に考える機会は少なく、今回の講習会はマンション居住者の立場でエレベータのリスクを一緒に考えるよい機会になりました。
投稿日:2019年07月21日
2019年7月21日、民泊を活用したリゾートマンションの活性化を目指したトークセッションに「民泊問題研究家」の立場で、ファシリテーターとして参加しました。越後湯沢で開催されたこの会には地元の管理組合関係者など60名以上が参加し、リゾートエリアでのこのテーマへの関心の高さがうかがわれました。セッションはリゾートマンションが直面する滞納や利用者減少問題で、資産価値が低迷する状況において民泊を活用して活性化できないかを参加者と共有することが目的です。第一部は元日本代表アルペンスキーヤー皆川健太郎氏から湯沢町の「ウィンターリゾートの将来性について」講演、その後、airbnb社から同社の取り組みと今後の展望について、さらに湯沢町で唯一、住宅宿泊事業法に基づく民泊を運営するリゾートマンション「エンゼルリゾート湯沢」から、この1年間の民泊事業の報告がありました。事業報告の中では、民泊開始後それまでの10万円だった流通価格が180万円に跳ね上がった報告はリゾートマンションでも資産価値を回復する可能性があることから参加者の注目を浴びました。トークセッションはその後に行われました。
トークセッションでは、テーマの一つであるリゾートの現状について、皆川氏からは、湯沢は「天然雪」という資源に恵まれていること、再生のためにニセコのように何もない土地に建物を建てることから始めるのではなく、湯沢も苗場も既にある施設が活用できることはポテンシャルがあることだとの意見表明がありました。続いてairbnbからは、交通の便が良い湯沢では宿泊施設があればまだニーズを充足できていないこと、ホテルなど既存宿泊施設とも共存できるとの意見がありました。その後にリゾートマンション専門の管理会社エンゼル社からはマンション管理部大野元氏が、リゾートマンションでの民泊導入に関して丁寧な合意形成をしてきた経緯、安心安全で不安がない民泊を運営するための工夫、滞納問題で管理組合が取得した住戸を活用した民泊の提案などから、「日本のリゾートを活性化させたい」という熱い思いが伝わってきました。80分の限られた時間でしたが、リゾートマンションの関係者にとって興味深い提言が次々出されました。
私、ファシリテーターとしては、民泊には功罪があり、一律で禁止するのではなく、居住者に不安がないように管理が徹底できるであれば、分譲マンションでも民泊は可能性があること、また管理組合には管理会社の言いなりではなく、「経営」の視点をもって主体的な取り組みが必要であること、資産価値を向上させるため、継続した情報共有が重要であることなどを提言して締めくくりました。
★セッションの途中、参加者からの質疑の中で、町としても活性化のためなるのであれば、民泊も活用もあり得ることを共有することができました。さらにエンゼルリゾート湯沢に居住する区分所有者からは民泊導入後、居住者を不安にする問題は起きていないこと、加えて今の民泊の負のイメージをなくす必要があるとの強い意見がありました。突然の発言でしたが、管理組合関係者の生の声であり、同じ立場で参加している管理組合の方々には、説得力があったのではないかと思います。今回は余韻が残るとても有意義なトークセッションになったと実感し、これからもリゾートマンションの再生に向けた支援を続けていくつもりです。
投稿日:2019年07月16日
6月18日に発生したマグニチュード6.7の地震は新潟県北部、山形県南西部の県境地域で大きな被害をもたらした。この地震におけるマンションの被害を確認するため、6月10日に現地を訪ねた。元々、木造住宅が多い土地がら、瓦屋根の戸建住宅の瓦の崩壊、崩落などが報道されたが、結論から言うと鉄筋コンクリート造のマンションでの被害はほとんどなかった。これは今回の揺れが横揺れで短く、余震も少なかったこと。また震源が両県の沖合ということで直下型ではなかったことにも関係があるようだ。
いくつかの管理組合を訪ねて発災当時の状況を聞き取りした。震度6弱を記録し山形県鶴岡市。市内のマンションでは、一瞬は地震の揺れで専有部分内の食器が壊れたなどの被害はあったと証言する9階の居住者はいたものの、建物は旧耐震基準の建物も含め、外観からの被害は見当たらない。市の住宅課でもマンションの被害はないという。一方、気象庁の発表で震度6強とされた新潟県村上市には同市のほぼ中央部分にある瀬波温泉のリゾートマンションを訪ねたが、こちらも被害はなかった。今回の被害は新潟、山形に県境付近で被害が集中している。ただ両市とも広域合併された現在、発表された震度はこれら県境の一部の地域に限定されていることがわかる。
瀬波温泉のマンションでは、発災後、理事会が中心になって災害対策本部的な動きをしたという。地震時管制運転が機能し、エレベータは一時的に停止したものの、幸いエレベータ閉じ込めもなく、深夜には復旧したという。市内の病院ではエレベータ閉じ込めが発生したという。温泉浴場に行くためにエレベータに乗る人がいてもおかしくない時間帯だった。
今回は被害がなくてよかったが、それはあくまで今回ラッキーだっただけのこと。もし震源地が直下型であったり、余震が続いたりと、自然の動きは予測できない。
地震発生から1か月。もはやこの地震のことを覚えている人の方が少ないのではないだろうか。日ごとに地震の実感が遠のく、今日この頃、災害は月日が経って忘れてお終いではなく、いつでも対応できるように意識しなければならないことを改めて感じる。
投稿日:2019年07月13日
7月13日港区住宅課主催の分譲マンションセミナーで「築20年、30年、40年のマンションが今できることは何か」と題して長期修繕計画を活用してマンションの将来を考える講演を行いました。タイトル通り、築20年以降の高経年マンション管理組合の方々が多数参加されていました。管理に関心を持たないと「管理不全」に陥る可能性があること、管理が悪いとどんな状態になるのか実例を交えながら紹介し、そうならないための方法を提起しました。また高経年化し、管理が複雑化する中で、適正な修繕積立金による健全な資金計画にするために、長期修繕計画が不可欠であること。その長期修繕計画の構成や、作成するタイミング、作成する先の違いで異なる長期修繕計画の精度、表の見方、実際の活用方法など管理に則した留意点を紹介しました。最後に再生を検討する段階でやってはいけない「建替えありき」の進め方や初期合意を軽んじて進めた場合の失敗など、これから進めるうえでのポイントを伝えて終了しました。
★「長期修繕計画」は健全な管理組合運営するうえで、とても奥が深く、まだまだ伝えたいことがたくさんあります。また実際の質疑にもあった大規模修繕工事での設計事務所の選び方や、管理組合運営に関することなど機会があれば、お話していきたいと思っています。