投稿日:2017年08月30日
標準管理規約(民泊禁止)改正を考える
標準管理規約が改正され、昨日8月29日公表になりました。6月10日に住宅宿泊事業法が成立し2カ月余りで標準管理規約改正に至りました。昨年3月に全面的な改正がされてまだ日が浅い中で、今回改正されたのは民泊に関する法律(「住宅宿泊事業法)が成立(合法化)し、管理組合での民泊対応が求められたことによります。
1.改正の背景について
民泊の合法化への流れについてはこれまで私のウエブサイトでも何回か取り上げてきましたが、海外からの旅行者の増加とホテル不足の現状、そして2020年東京オリンピックに向け渡航者のさらなる増加が予測されています。こうした社会の変化を受け、住宅を宿泊施設として活用することが決まったものです。
住宅宿泊事業法はマンション居住者のためではなく、国内外の旅行者の宿泊先確保が制定の主な理由です。宿泊先を確保するということですが、民泊には、騒音やゴミ出しなど表面的な問題だけにとどまらず、生活空間へホテル代わりの短期利用者が毎日、入れ替わり出入りすることによる不審感など目に見えない心理的な問題が多いという特徴があります。居住者とのこうしたトラブルを回避するため、法律が審議される過程において、マンション管理組合では民泊を認めるか、認めないかを管理規約で規定することが望ましいとされました。これを受け、国土交通省からは規約制定例としての案が示されることになり、今回の標準管理規約改正に至ったものです。
2.改正する規約内容を考える
公表された標準管理規約では民泊を禁止する場合として「区分所有者はその専有部分を専ら住宅として使用するものとし、他の用途に供してはならない。」の規定に第2項を追加して「区分所有者は、その専有部分を住宅宿泊事業法第3条第1項の届出を行って営む同法第2条第3項の住宅宿泊事業に使用してはならない」。とされました。
禁止規約例が公開されましたが、この内容で本当によかったのでしょうか…? 実はこの規約には大きな落とし穴があることを知らなければなりません。
いわゆる「民泊」には前述の住宅宿泊事業法で新たに規定されたもののほかに、旅館業法「簡易宿所」としてのもの、東京都大田区の様に国家戦略特区法に基づく「特区民泊」がありますが、こうした他の法律での民泊のことは考えなくてよいのでしょうか。民泊利用者は法律や制度によって「お行儀」の良し悪しがあるわけではありません。民泊利用者からみれば宿泊先としてどれも同じです。つまり禁止するならば全ての民泊を禁止しなければ実効性はないのです。
全ての民泊を禁止する規約には第2項に加え、「区分所有者はその専有部分を宿泊料を受けて人を宿泊させる用途に供してはならない。」とする必要があります。実は標準管理規約改正版のパブリックコメントには、「『区分所有者は、その専有部分を、宿泊料を受けて人を宿泊させる事業を行う用途に供してはならない。』」のような規定を置くこともあり得る。」と記載しています。これこそ、全ての民泊を禁止する条文であり、本来であれば、こちらが標準管理規約として掲げられなければならないものと考えます。それを逆にして住宅宿泊事業法による民泊の禁止規定を出すことにより、誤解する管理組合がないと言いきれるでしょうか。昨年11月、国土交通省から「特区民泊禁止規約」が公表された時に、特区以外の地域の管理組合が特区民泊を禁止する規約改定を行った、と言う笑うに笑えない話が現にあるのです。この辺りのことを理解して規約を改正しないと、民泊禁止が不十分という結果にもなるので注意が必要です。
3管理組合としてなすべきこと
合法化された結果、年間180日を超えないという制限は設けられるものの、簡単な届出により、マンション内で「民泊」が営めることになります。現時点で制度運用方法を定める厚生省令や国土交通省令、また施行日については未定ですが、早ければ2018年の早い段階で開始される可能性があります。
民泊を禁止するためには今から管理規約で明確に禁止を定めておくことが、トラブル防止のため有効です。
4.まとめ
民泊が合法化され、開始が迫るなかで管理組合内に不安もあるかと思います。
管理組合の実態に合わせ民泊を禁止するための規約を改定のための相談をお受けしています。民泊に関連して、ご不明な点がありましたらお気軽にご相談ください。
◆標準管理規約改正は、国土交通省ホームページ(http://www.mlit.go.jp/common/001198802.pdf)を参照ください。
投稿日:2017年08月27日
マンション管理大学第4回(最終日程)では「マンションの第三者利用を考える」をテーマに講演を行いました。この日はマンション管理大学の最終日であることもあり、学長である丸山英気千葉大学名誉教授も出席されました。講演では昨今、管理組合で特に問題になっている民泊の実態と住宅宿泊事業法など新制度導入の下で管理組合が留意しなければならない点に重点をおいてお話しました。来年春にも施行される住宅宿泊事業法ですが、この法律は引用条文が多くわかりにくいこともあり一覧を基に事業者、管理業者、仲介業者に整理して解説も加えました。また国土交通省令、厚生労働省令の引用で運用が発表されていない事項が多数ある点を紹介し、今後も注視する必要があることを共有しました。
セミナーの都度、確認している管理組合での民泊対応状況ですが、今回の参加者の中で民泊禁止の考えをお持ちの方が8割いる一方で、規約改定により民泊禁止としている組合はわずか2割止まりでした。マンション管理に関心が高い方々であってもこの程度であるところに、この問題の先行きを暗示させられます。
従来からお伝えしている通り、管理組合としての対応は何といっても規約改定が基本ですが、国会審議の中で答弁があった、理事会決議で民泊禁止とできるという点については、制度設計とその後の運用の中で注視していく必要があります。その他180日の上限が設けられたものの、そのカウント方法や報告、届出の際の確認書類など現時点で決まっていないことがたくさんあります。これらについてもしっかり見守っていく必要があると言えます。
講演後、丸山先生からは外国に本拠がある住宅宿泊仲介会社への規制の実効性について問われました。法律上は謳われているものの、実効性には問題があること、また新法施行後の民泊事案では、民泊後に規約を制定した場合の裁判所の判断(区分所有法「特別の影響とその承諾」)については、問題になるだろうとの意見をいただき、規約改定の必要性を改めて強く感じさせられました。
★丸山先生の出席で区分所有法と標準管理規約について触れる辺りは、緊張しましたが、民泊問題は、引き続き情報発信していきます。
投稿日:2017年08月25日
1月27日の国土交通省の周知文書以来、マンション大規模修繕工事の不正コンサル問題が業界ないだけでなく、雑誌などメディアでも広くクローズアップされていますが、本日(8月25日)、不正コンサル問題のセミナーが中野サンプラザで開催されました。テーマは「マンションを取り巻く悪魔のコンサルタント~騙されないためのチェックポイントと勘どころ~」とそのものズバリのセミナーです。講師は不正コンサル問題にこれまで精力的に取り組んできた鈴木哲夫一級建築士です。今回のセミナーは録音、写真は不可という条件付きで開催されましたが、跋扈する不正コンサルの実態と、それを踏まえた管理組合としての対応策ということで、インパクトがありました。特に後半の対応策について、騙されないようにするという注意喚起は、たいへん貴重な情報となりました。
★不正コンサル問題は善良な管理組合を騙すという点で、マンション管理士として、どうしても許すことはできません。そのような不正コンサル問題について、私はこれからも随時、情報を更新していきます。また機会があれば、これまでの適正コンサル選びの中で得られた不正コンサルを撃退の具体例などもセミナーや勉強会など様々な機会でお話させていただきたいと思います。
投稿日:2016年11月12日
NPO都市とまちづくり研究会は、コーポラティブハウス建設、マンション建替やマンション大規模修繕などを通してまちづくりに関わる組織ですが、毎月「一木会」として勉強会を実施しています。今回11月10日は、「激動する民泊、法改正前にするべきことはこれ!~民泊の実態を知り、対応策を考える」をテーマに講演することになりました。一木会の参加者はコーポラティブハウスの所有者、管理組合の方々、町づくりに関わる一級建築士、施工会社、その他、都市とまちづくりに関心を持つ方々ですが、10日は30名近い方が集まりました。まちづくりという視点があることから、民泊へのスタンスで制限派と推進派の割合は7:3。管理組合向けよりはやや推進の考えかとを有する方が多く感じられました。11月現在の制度のおさらいと、今後の見通しや具体的対応策までお話しました。終了後の懇親会の自己紹介では、ほとんどの方が民泊に関してなんらかの経験や意見をもっているなど感心させられました。
投稿日:2016年11月10日
マンションコミュニティ研究会が主催する第14回フォーラムのテーマは外部管理者制度についてです。「実際に機能する外部管理者方式とは」と題して11月9日日比谷コンベンションホールにて開催されました。管理組合関係者、マンション管理士など150名を超える参加者があり、基調講演は外部管理者方式にも明るい早稲田大学大学院の鎌野邦樹教授、その後に実際に外部管理者を派遣しているNPO法人から事例の報告がありました。積極的に外部管理者を派遣している事例の後に私からは「外部管理者の問題点」として実例を報告させていただきました。平成28年版標準管理規約で、盛り込まれた外部管理者方式は、役員のなり手不足や役員の負担軽減になると言われますが、外部管理者との信頼関係が崩壊した時におきる管理者と管理組合の確執やトラブル。なかなかこれらが表面化することはありません。しかし現に発生しているのです。不透明な会計、共用部分の電気代の上乗せ、駐輪場はじめ館内での管理不全、管理者のお手盛り管理・・・。こうした事態はまさに管理組合の悲劇です。私は外部管理者方式を竣工以来取り入れた管理組合における放漫管理の結果、管理が立ち行かなくなった管理組合で、理事会を立ち上げ、適正化するまでの事案を報告しました。合計4回の総会を経て、ようやく管理者の長期独裁体制から解放された管理組合の長く激烈な闘いを報告することで、外部管理者方式の危うさについて警鐘を鳴らしました。
★管理組合の皆さんには「役員の負担が軽くなる」という外部管理者方式の甘い誘惑に乗せられることなく、外部管理者方式が孕むリスクを十分考えたうえで慎重に判断していただきたいと強く思います。
投稿日:2016年11月02日
マンションコミュニティ研究会で「激動する民泊、法改正前にするべきことはこれ!」と題して民泊に関する最新情報について講演を行いました。今年2月の民泊に関する講演以来、8か月が経過し、この間も民泊をめぐる状況は大きく変動しています。
4月には民泊は旅館業法「簡易宿所」として一部認められるようになりました。しかしながら、旅館業法として手続きした民泊は、ごく一部でその多くは未届けで営業する「ヤミ民泊」ということになります。また民泊新法の検討が進み、上限日数を180日以内で定めることや、家主不在型の場合には登録制にするなど具体的な内容が決まりつつあります。そして1月の通常国会でいよいよ新法が審議されることになっています。これまでの政府の動きをみる限り、国会審議がなされれば、成立はまちがいないでしょう。
しかしながら、新法ができたとしても、本当に実効性のある管理ができるのか、疑問が残ります。また全ての民泊ホストがきちんと届け出されて、ヤミ民泊が解消されるわけではありません。
では管理組合としてどうするのか、事前段階と実際に民泊が発生した段階の具体的対応策を紹介しました。
出席者の大半が民泊を制限するべきとお考えの方でしたが、出席者の中で管理組合の民泊禁止規定を対応した方は、2割程度しか見られませんでした。民泊に関心がある方々のセミナーでさえもまだこのような状況です。民泊がマンション内に入り込む前段階で規約で防御する、これが管理組合における民泊対応の第一歩です。(2016年10月20日、月島区民館にて)

投稿日:2016年11月02日
マンション管理士は管理組合目線で管理組合に最も近い所からサポートする役割を担いますが、このマンション管理士が所属する団体の一つ千葉県マンション管理士会で「マンションでの民泊問題を考える」と題して民泊対応に関する講演を行いました。管理組合がいざ、民泊を制限しようにも対応方法が分からなくて、ということがよくあります。民泊問題は、奥が深く、かつ日々の動きが激しく、情報を的確につかむこと、それに民泊の実態を知ったうえで対応すること、これらが求められます。そのような観点からマンション管理士の方々に民泊の実態を知っていただき、多くの管理組合へ適切なアドバイスがなされることを期待して民泊に関する最新情報をお伝えしてきました。刻々と変動している民泊制度とその対策がよく分かったと評価をいただきました。
(10月10日千葉市中央コミュニティセンターにて)
投稿日:2016年09月30日
2016年9月、マンション防災の新しい資格「マンション防災認定管理者」が発足しました。第1回の研修と試験には22名が参加しました。災害はいつ発生するかわかりません。いつ来るかわからない災害に対してマンションの中で、生き延び、在宅避難をよりよく実現させるために対応できる人材がマンションの中に求められています。防災に関する専門知識を得るだけにとどまらず、管理組合内でどのように展開、発展させていくか、あまり関心がない方々をどのように巻き込んでいくのか。実践的なワークショップも体験することで、真に実践的なリーダーを養成することを目的としています。今回この講座の中で、「熊本地震でマンションに何が起きたのか?」と題して講演を行いました。直下型地震である熊本地震は私たちマンションや管理組合に関わる者にとっては、教訓の宝庫です。こうした貴重な教訓を正しく伝え、何をすべきかを考えてもらうきっかけになれるよう意識してきました。この活動が、広く日本中に発展していくことを願っています。
★熊本地震を風化させないこと。そのためには地道に対策の必要性を説いていくに限ります。これからもマンション管理組合への伝道師として防災対応を訴えながら活動しています。

投稿日:2016年09月24日
9月24日、新宿にて管理組合セミナーが開催され、マンション管理組合に関係の深い専門家の実態と活用方法、間違いない選び方について講演しました。マンションに関連が深い専門家には大規模修繕工事などでは一級建築士、滞納管理費回収やトラブル解決には弁護士、その他、管理組合運営や設計事務所選定コンサル、管理会社変更でマンション管理士などがあります。これらの専門家の実態は。現状で専門家が専門性をもって機能しているのか。管理組合に対して本当に誠実に支援されているのか。ありのままの専門家の実態をお話しするとともに、どうすれば間違いなく誠実で、力量のある専門家を選ぶことができるのかなど、2時間たっぷりお話し続けました。昨今ネットでもある程度は候補を選ぶことはできるものの、それだけの情報では判断できません。結局は候補とする複数先からヒアリングにより各項目を確認する必要があるのです。専門家の具体的な選び方を知る機会がほとんどない出席者の方々には初めて聞くことも多かったことと思います。
★専門家選びは奥が深いものです。これからも透明性がある専門家選びのノウハウを提供していくつもりです。

投稿日:2016年06月20日
うらやす市民大学は「市民のための、市民による、市民が創る大学」として8年目を迎える行政と市民協働による「学びの場」になっています。この平成28年度科目「マンションのこれからの課題に備える」(廣田信子コーディネーター)の一コマとして、6月20日、マンション管理組合で昨今、話題沸騰の民泊問題を取り上げ講演しました。今、その大半が違法で進行中の民泊の実態と管理組合の最前線の取り組みを紹介しました。現在、旅館業法の改正と民泊新法制定の協議が進められていますが、生活の拠点であるマンションに宿泊目的で旅行者が出入りする違法行為が頻繁に行われています。東京ディズニーランドが至近の浦安においては立地の良さゆえ、民泊が喫緊の課題になっています。この問題に対応するには管理規約ではっきり民泊禁止を打ち出すことが不可欠です。それとともに日常の管理においても規約違反行為への毅然とした対応が必要で、これから民泊が合法化されるうえで管理組合の対応がいっそう重要になってくるのですが、合法化に向けての制度設計や日数制限などの協議がヤマ場を迎え、目が離せない状況です。6月中には制度の方向性が固まると言われており民泊問題は今まさに大詰めを迎える中でタイムリーな講座となりました。
★奇しくも講座の日(6月20日)は厚生労働省と国土交通省の共同による第13回「民泊サービスのあり方検討会」による最終報告の日に当たりました。この講座を通して参加者のこの問題に対する関心の高さが、はっきりと感じることができました。
