投稿日:2022年07月21日
高齢化社会の進行と高齢単身世帯の増加とともに、マンションでも高齢者の孤立や孤独死が社会問題になっていることは、ご存知のとおりです。
孤独死が発生した場合、専有部分内の特殊清掃などの対応は通常、相続人が行うため、管理組合がこの問題に直接関わることは少ないと言えます。しかしながら、相続人がすぐに見つからない場合や相続人が相続放棄した場合には、「相続財産管理人」の選任を裁判所に申し立てするなどの手続きが必要です。それは持ち主がいない財物を管理組合は勝手には処分できないからです。孤独死が発生した場合、こうした手間がかかるとともに、それ相当の費用を要します。加えてこのような事案の場合、室内がゴミ屋敷状態ということもあります。それらの額は数十万円から百万円台超の高額になることもあり得るのです。
東京都内のマンションで相続放棄があるとは信じられないかもしれません。また物件は売却すれば、買い手はつくので、そのような心配は無用と思われかもしれませんが、現実はそう甘くはありません。長く親族との関りを持たず、孤独な高齢者の場合、関りを持ちたくないと、相続放棄になることすらあるのです。また特殊清掃やゴミ屋敷状態の解消などのために費用がかかり、相続人が現れない限り、その費用は管理組合が立替えして、負担せざるを得ないのです。しかしながら、管理組合ではこのような費用を想定することはなく、突然に孤独死事故が起きたときに、どう対応しようかと右往左往するのが常です。
こうした中で、東京海上日動火災保険から「マンション管理組合事故対応費用保険」が7月19日に発売されました。この保険では、①相続人の探索費用、②相続財産管理人選任申し立てに関する費用、③孤独死等が発生した室内の消臭消毒費用のうち管理組合が負担を余儀なくされる部分となっています。
管理会社などが保険契約者になるということで、管理組合が直接契約するものではないようですが、単身高齢者が増加するこれからの高齢化社会に備えた対応の一つとして、今後注目されるのではないかと思われます。管理組合でも、この問題を避けて通れなくなってきたことは間違いありません。
投稿日:2022年07月20日
令和4年4月1日にスタートした管理計画認定制度。国を挙げ、自治体が積極的に取り組み、マンションの管理状況に踏み込み、管理不全のマンションをなくして、マンションの管理をよくしていこうという趣旨の制度です。制度開始前後は、私も各地のセミナーなどでこの制度についての解説を行ってきましたが、あれから3カ月を経過しました。
目指すべき方向性と趣旨はたいへん“立派”な制度ではありますが、現実はどうでしょうか。管理計画認定制度は管理計画が策定された自治体において、管理組合が管理計画の申請ができるというもので、東京23区内ではまだ板橋区のみというのが実態です。新築マンションでは分譲会社による予備認定が進んでいるという話はあるものの、先行する板橋区でも、認定されたマンションは6月16日現在、築48年のマンション一つだけです。制度が始まったばかりではありますが、この制度が定着するには、まだまだ時間がかかりそうな印象を受けます。管理の評価がマンションの資産価値を左右するまで定着していくのか。今後の進展を見守りたいと思います。
投稿日:2022年01月21日
公益財団法人まちみらいニュース第201号コラム:「マンションよもやま話」でマンションでの雪かき対応を紹介。
既に北日本や日本海側では大雪の被害が報道されていますが、首都圏でも雪の便りを聞く時期になりました。「マンションの雪かきは誰がするの?」というテーマで週刊誌のインタビューを受けてアドバイスしたのが早10年前。首都圏では冬でも積雪になることは少なく、忘れがちな管理対応の一つです。管理会社がやってくれると思う(期待する)のが心情ですが、大雪の早朝や夜間に管理員出勤することは不可能ですし、そもそも管理委託契約にもありません。では誰が雪かきするのかといえば、「マンションに居住する人」がやらざるを得ないのです。これは大規模な地震など災害が発生した場合と同様で、積雪対応(雪害)は災害の一つと考えるとわかりやすいでしょう。
雪かき用のスコップやスノーダンプ、撒くだけで雪が溶ける融雪剤などの積雪対応グッズは雪が降り始めてから調達しようとしても首都圏のホームセンターなどでは在庫も少なく、売り切れ続出となることが想定されます。それゆえ、管理組合(または防災会)として雪かき用の備品を日頃から備蓄しておくことが必要です。また早朝の積雪時など管理会社に頼れない場合に、誰がどのように雪かきを指示し、実際に誰が対応するのかなど管理組合内でのルールや役割分担を平常時から検討しておくことも重要です。備品の収納場所や開けるための鍵の保管者など予め確認しておくことも必要です。既に「災害対応マニュアル」がある管理組合でしたら、マニュアルの一部に積雪対応に関する項目を加えるのがよいでしょう。
※雪かきする場合、転倒や上層階から氷柱(つらら)や雪の塊が落下することがあるので、足元は滑りにくい靴にヘルメット着用など万全の態勢で対応するようにしましょう。
投稿日:2021年12月22日
老朽化マンションの増加が加速しています。令和2年では築40年超は103万戸が20年後には405万戸になるとの数字(国土交通省「築後30年、40年、50年超の分譲マンション調査」)で示されています。こうした背景がありながら、建替えが完了したマンションは全国でわずか295棟(建築中を含み、被災マンションを除く:国土交通省調査 令和3年4月1日現在)に過ぎません。それには、マンションでの合意形成がなかなかまとまらず、これまで先送りされてきたという背景があるのです。
建替えには区分所有者の5分の4(80%)の多数の賛同を得なければならないという条件があります。これを4分の3(75%)に緩和しようとの動きが出ています。法律を作るうえで調査、協議のうえ法務大臣に諮問する機関である法制審議会に2022年度にも諮問することが先日報道されました。
条件の緩和に国が動き出したことは建替えへのハードルを一段下げることにはなりますが、現在から5%下げただけでは問題は解決しないだろうと私は考えています。建替えとなれば解体と建築の数年は転居を強いられます。またよほど特殊な好立地でもない限り、相応の追加費用負担も発生するのが現実です。高齢化マンションには老若男女、様々な人が居住し、世代や生活環境、金銭感覚や価値観など異なる中での「建替え」への合意は難しいと言わざるを得ません。さらには扱いを一歩間違えると、建替えを推進したい派と今まで同様に長年慣れ親しんだ所に居住したいという二つの派にマンション内が分断されてしまう恐れすらあるのです。
こうならないためには、条件の緩和の有無にかかわらず、自分のマンションの将来をどうするべきかという意識を区分所有者が持って主体的に行動するほかに道はないでしょう。まずは「建替え」ありきではなく、広い意味でのマンションの「再生」を一緒に考える機会を持って、議論を始めることが大事な一歩ではないでしょうか。
投稿日:2021年12月03日
2022年(令和4年)4月に施行されるマンション管理計画認定制度の事務手続きを表した「事務ガイドライン」が国土交通省から11月30日に公表されました。「管理計画認定制度」自体は既に公表されている内容と変わりはありませんが、管理組合にとって気になる点があるので情報を共有したいと思います。
「管理計画認定制度」として認定される基準は次のとおりとなっています。
(1)管理組合運営
①管理者等が定められていること
②監事が選任されていること
③集会が年1回以上開催されていること
(2)管理規約
①管理規約が作成されていること
②災害等の緊急時に管理上必要な時の専有部分立ち入りや修繕等の履歴情報の管理等について定められていること
③財務・管理に関する情報の書面交付について定められていること
(3)管理組合の経理
①管理費と修繕積立金等について明確に区分して経理が行われていること
②修繕積立金会計から他会計に充当されていないこと(注釈:一般管理費が赤字の場合など)
③年度終了時点での滞納額(修繕積立金の3ヵ月以上)が全体の1割以内であること
(4)長期修繕計画の作成と見直し
①長期修繕計画がガイドラインに準拠して作成され集会で決議されていること
②長期修繕計画の見直しが7年以内に行われていること
③長期修繕計画の計画期間が30年以上でかつ残存期間内に大規模修繕工事が2回以上計画されていること
④長期修繕計画で将来の一時金徴収を予定しないこと
⑤長期修繕計画から算定された修繕積立金の平均額が著しく低額でないこと
⑥長期修繕計画の最終年度に借入金がない計画になっていること(注釈:収支が合致していること)
(5)その他
①組合員名簿と居住者名簿を備え、年1回以上更新を確認すること
②マンション管理適正化指針に照らして適切なものであること
しっかり管理されている組合では、さほど問題にならないかもしれませんが、これら「認定基準」の中で気になる点が2つあります。
1点目は(2)-②管理規約で災害時の専有部分への立ち入りや修繕等の履歴が規約に定められているか。
2点目は(5)-①居住者名簿を作成し、毎年更新できているか、となります。
1点目は現在の標準管理規約に準拠(23条「必要箇所への立ち入り」、64条「帳票類等の作成、保管」)していればクリアできますが、古い標準管理規約に準拠している場合には注意が必要です。2点目の「居住者名簿」はどうでしょうか。「組合員名簿」は大半の組合で完備されているはずですが、「居住者名簿」を完備させている組合はどの程度あるものでしょうか。標準管理規約では第三者に貸与する場合には「誓約書」を提出するように規定(19条)されるものの、「居住者名簿」の提出を明文化し、かつ毎年更新できている組合は少ないのではないでしょうか。
これらに対応するため、規約の改定には総会決議が必要となりますし、「居住者名簿」は個人情報にも絡む問題などから組合員や居住者への周知や合意形成が不可欠であり、4月になってからすぐに対応できるものではありません。前もって準備しておく必要があるでしょう。まだできていない管理組合は今からでも対応に着手することをお奨めします。
マンション管理計画認定に関する事務ガイドラインはこちら➡ 001443499.pdf (mlit.go.jp)
投稿日:2021年08月29日
4年ぶりに標準管理規約が改正されました。標準管理規約は国土交通省が推奨する規約のひな型ですが、適正なマンションの管理と管理組合運営のために必要な事項が盛り込まれているので管理組合運営のうえで参考になります。
今回の改正のポイントは大きく3つあります。
①新型コロナウィルスなど感染症拡大への対応(ITを活用した総会・理事会運営などを含む)
②専有部分と構造上一体化した部分の管理への対応
③その他社会や法律などの変化への対応
①コロナ禍における適正な対応とは、感染拡大防止を最優先に考え、集会室など共用部分の使用を一時的に停止・制限することが明文化されました。また総会の開催を会計年度開始後2か月以内に総会を招集できないような止むを得ない場合は、状況が解消するまで延期が容認されます。そのうえで会場に集まらず、WEB会議方式で理事会や総会ができることを明文化し、“密”を気にしないでも理事会や総会が開催できるようになっています。ここでいう「WEB会議」とは即時性、双方向性のある映像と音声による会議として、従来のメールなどを中心とした「電磁的方法」とは区別して定義されました。議決の条件も会議場に集まって行う会議と同等であると示されましたが、これは従来にない画期的なことです。このほかコロナ禍で荷物を対面せずに受け取れることから注目を浴びた、いわゆる「置き配」のルール化などについても新たにも示されました。
②専有部分と構造上一体化した部分とは、具体的には給排水管があります。従来から管理組合で更新する場合、専有部分の配管は区分所有者が実費に応じて負担するものとされていましたが、今回の改正では、予め規約の改定や既存工事済みの住戸との公平性などの条件を満たせば管理組合が修繕積立金を使用して実施できることが示されました。
③その他社会の変化に対応した改正では、理事長など理事の役職の「解任」を理事会決議でできることが明文化されました。従来の規約では「選任」までしか規定がなく、争いになることがありましたが、これが明確化されました。また議事録に関しては署名押印が必要であったものから「押印」が削除されたことは、はんこ廃止の時流にかなったものと言えます。(押印廃止は令和3年9月1日以降の適用となります。)またマンション管理適正化法の改正で制度化された「管理計画の認定制度」の申請について総会議決事項であることなどが追加されました。
★前回の標準管理規約改正の際は、「コミュニティ条項の削除」など広く物議をかもしましたが、今回はそうした点はなく、理解しやすい内容になっています。特にコロナ禍での感染拡大防止のために、できることから管理組合で見直しされてはいかがでしょうか。
《参考》国土交通省WEBサイトより
https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/jutakukentiku_house_tk5_000052.html
投稿日:2020年09月07日
台風10号が九州地方をかすって通り過ぎた。「これまでに経験したことがないような・・・」と最大限の警戒が気象庁から呼びかけられ、進路にあたる地域の方々にとっては気が気でなかっただろう。停電発生や建物に被害はあったものの、犠牲者が少なかったのは奇跡的だ。今回の台風では、「タイムライン」という言葉がテレビや行政からの広報など随所で耳にしたと思う。「タイムライン」とは時系列で対応を整理し、可視化することを言うが、台風や水害を想定した「タイムライン」は、逃げ遅れることがないように、適切な避難することを目的に作られる。これまでの水害をみると、避難が遅れて助かるはずの命が失われた事例は枚挙にいとまがない。ではマンションではというと、マンションの場合、堅牢な鉄筋コンクリート造で洪水に流されることはまずない。また浸水があったとしても、上層階へ避難(「垂直避難」という)することができるので、万一の洪水の場合でも安心だ。一般的なタイムラインは避難方法や避難の時期を意識するために作成するものであることは言うまでもない。これに対して、マンションではマンションに在宅しながら台風を待ち受ける(「在宅避難」という)点で、この「タイムライン」の意味合いが異なってくる。では「在宅避難」が前提のマンションで「タイムライン」は必要ないかというと、そうではない。マンションではマンションごとに構造も設備も異なるため、「在宅避難」するうえでの事前の準備が必要になってくるからだ。
強風がたたきつけるバルコニーにフラワーボックスや物干し竿があるなら飛ばされないように室内へ格納する。はずれそうな網戸があるならば外れないよう対応する。当然と言えば当然のことだが、それができないことが多いのだ。大雨が降り注ぐことになるバルコニーのドレン(排水口)に落ち葉や泥が詰まっていたら、それを取り除く必要がある。さもないとバルコニーに水が溜まり、サッシから室内に浸水することもあり得る。またマンション室内に「籠城」する以上、「兵糧」は不可欠であり、食料や飲料水の備蓄は重要だ。地震に備えて、備蓄を進めている方も多いと思うが、水害時にも同じことがあてはまる。マンション共用部分を管理する管理組合(又は防災会等)であれば、敷地内や共用部分からモノが飛ばされない対策も必要だ。また前述のように居住者が対応すべき点の注意喚起も必要だ。こうした準備は、いざ急にと言われてもなかなかできるものではない。日頃からマンション独自の「タイムライン」を居住者の協力を得ながら作っておくことをお奨めしたい。
★立地するエリアや電気設備・受水槽などの設備が地階にあるなど、マンションによっては浸水対策をする必要がある。ハザードマップでその危険性を認識するとともに、状況によっては止水板の設置なども必要になる。誰がどのタイミングで止水板を設置するのか、管理員がいないときはどうするのか、どのように設置すればよいかなど、マンションの特性を踏まえながら事前に対応することが重要である。
投稿日:2020年05月27日
緊急事態宣言が解除されましたが、飲食業や旅行業関係など、顧客が戻らず、雇用情勢が厳しい環境下において、給与が減るもしくは職を失い、収入に行き詰まるケースも出ています。これに対して行政からは様々な支援制度が打ち出され、賃貸住宅であれば、自治体が家賃自体を助成する制度(住居確保給付金制度)もありますが、残念ながらマンションの「管理費」が支払いできない事態を支援する制度はありません。
管理費の支払いができなくなる(いわゆる「滞納」)状態にあるということは、管理費以外にも住宅ローンや税金、公共料金などでの支払いの行き詰まりも推察できます。こうした中での管理組合の対応について説明します。
区分所有法では共用部分の管理に要する費用(管理費)の支払いが義務化されており、管理組合はその債権に先取特権という権利が認められています。また標準管理規約では管理費に加え、修繕積立金(これらを合わせて「管理費等」という)を管理組合に納入しなければならないことが規定されています。つまり、生活が苦しいからと言って、「管理費等」を払わないでよいことにはなりません。
これらを踏まえた管理組合の対応ですが、
①管理費等の「滞納」があれば督促を行う。(誰が生活困窮者か管理組合ではわかりません。)
②管理費等の「滞納」に関して支払いできない事情や支払い猶予の要請が滞納者からあれば、管理組合(理事会)としてその事情を確認し、いつまで返済猶予を認めるかについて当事者と協議のうえ、理事会で判断を決定する。
③さらなる経済的な困窮事情等から、「管理費等」が払えずに、競売や任意売却により、住宅を手放す場合には、後から所有した区分所有者に対して、「管理費等」の未納分を請求する。
区分所有法では管理組合は次の所有者に「管理費等」との債権を請求することを認めているため、コロナウイルスだから特別の扱いをしなければならないということはありません。
ただ、誰が悪いわけでもない今回のコロナ禍の被害者でもある、支払いに困窮する方々とは今の事情について相談にのり、今後の返済方法など管理組合(理事会)としてできる範囲で、対応していくことになるでしょう。
投稿日:2020年05月05日
緊急事態宣言が5月末日まで延長されることになった。管理組合にとって5月は総会開催シーズンであり、緊急事態宣言下で総会開催の可否を決める悩ましい判断に迫られている管理組合も多いことだろう。
現在の緊急事態宣言が発令された状況の中で、総会を開催しない(延期)場合にどのような影響があるのかを考えよう。
①予算執行の観点
②管理委託契約更新の観点
③現役員の役職継続の観点
まず①の予算執行については標準管理規約では「会計年度開始後、承認されるまでの間に『経常的で、止むを得ない』場合は理事会の承認で支出できる。」とされているので、予算外の工事などを除き日常の支出に関しては特段問題ない。
次に②管理委託契約更新は、組合員の「安全・安心のための止むを得ない」対応であることから理事会決議により、現在の契約と同一条件で「暫定契約」することで、管理に隙間ができることを回避できる。これは管理会社の団体「マンション管理業協会」の見解でもある。
さらに③は、総会が開催できず、新役員が総会で選任されない場合は、現在の役員がそのまま役職を継続することになる。この辺りは一度総会を延期した場合に、次にいつ総会が開催できるか不透明な中で、いつまでも引継ぎができないことになりかねず、その判断が難しいところである。
こうした管理組合として重大な判断をするにしても、問題は緊急事態宣言下での理事会開催の是非である。「対面」での会議は避けることが求められるなかで、どのように理事会を開催するか難しいところである。少し補足すると東京都の「緊急事態措置等」では、共同住宅は「社会生活を維持するうえで必要な施設」とされているが、「適切な感染防止対策」することが明記され、具体的な防止策として「密集する会議の中止(対面による会議を避け、電話会議やビデオ会議を利用)」と求められている。ここまで明文化された中での、対面による理事会への出席には、抵抗がある役員や組合員も出てくるだろう。
一方でメールによる理事会開催を考えている組合もあるだろう。しかし、標準管理規約では。予め電磁的方法を定めている組合を除き、メールでの重要な判断は認められていない。緊急事態だからという言い訳はあるものの、メールではどうしても一方通行となりがちで、理事が意見をもって協議することが難しくなる。ましてや総会に関わる重大な判断が求められる理事会だから慎重に臨みたい。
そこで緊急事態宣言下で提案したいのは、オンライン方式による理事会の開催である。オンライン方式であれば、画面を見ながらタイムリーに意見を出し合い、対面と変わりなく審議できることは明らかだ。また管理規約で「電磁的方式」の規定がなかったとしても、外出自粛が社会的に求められている中で、組合員(役員)の「安全・安心のため」であれば、オンライン理事会とすることは理にかなうことになろう。
現在、ビデオ通話会議システムは企業のテレワークの普及とともに拡大しており、無償で使えるシステムも、LINE、Skype、ZOOMなど様々である。これらを活用するなど工夫して対面によらずに理事会を開催することを推奨したい。
オンラインによる理事会を実施するうえでの条件は、参加者がスマホか、パソコンか、タブレットを所有しWiFi環境にあることが必須である。これについては既にスマホの普及率が50代以下で9割、60代でも7割、70代で5割(総務省情報通信白書平成30年)と言った現状を考えると、決して実現できないことではないだろう。むしろ、今までやったことがないので、尻込みする役員もいることから、操作方法など積極的に支援することも重要となる。
では管理会社はこのオンライン理事会をどう考えるかというと、決して積極的とは言えない。安易に総会を先送りする傾向にあるように思えてならない。緊急事態宣言の出口が見えない中で、加えて専門家会議が最近になって打ち出した「新しい生活様式」の中でも、対面での会議は避け、オンラインを活用する指針が出されている以上、管理組合においてもこの問題をいつまでも、先送り放置するわけにはいかないだろう。こうした状況も踏まえ、理事会をいつでも対面によらず実施できる体制を準備しておくことは有効であり、これからの「新しい生活様式」の中で必要なことだと考える。
★従来の常識が通用しなくなる「新しい生活」に不安はあるが、管理組合も柔軟に対応しなければならないと考えさせられる。
投稿日:2020年04月13日
4月7日に緊急事態宣言が発出されて1週間が経過する。その後、10日には東京都から「新型コロナウィルス感染拡大防止のための緊急事態措置等」(以下「緊急事態措置」と略す)が発出された。理美容や居酒屋、ホームセンターなどの扱いが注目されたが、管理組合に関する重大な情報が「緊急事態措置」に含まれているので紹介する。
まず、マンションは「共同住宅」として病院やスーパーのように「社会生活を維持するうえで必要な施設」と位置付けられ、緊急事態宣言の期間中も継続することになった。これを受け、多くの管理会社において交通機関が止まらない現状では、管理員や清掃員のゴミ出しなど最低限の業務は継続されるようになっている。
そのうえで、5月は多くの管理組合が総会を開催する時期となることから、4月は決算理事会を迎える理事会も多い。ここでの悩みは、総会を開催するか、延期するかという点である。緊急事態宣言が予定通り5月6日に解除されるとしたならば、それ以降の5月の総会は開催可能となるが、宣言が解除されずに延長になったらどうなるのだろうか。これは誰にも分らないことである。
こうした状況の中での考え方を整理するために、総会を開催しない場合にどのような影響があるのかを考えよう。
①予算執行の観点
②管理委託契約更新の観点
③現役員の役職継続の観点
まず①の予算執行については標準管理規約では「会計年度開始後、承認されるまでの間に『経常的で、止むを得ない』場合は理事会の承認で支出できる。」とされているので、予算外の工事などを除き日常の支出に関しては特段問題ない。
②管理委託契約更新は以前もこのコラムでお伝えした通り、組合員の「安全・安心のための止むを得ない」対応であることから理事会決議により、現在の契約と同一条件で「暫定契約」することで、管理の隙間を回避することができる。
③総会が開催できず、新役員が総会で選任されない場合は、現在の役員がそのまま役職を継続することになる。この辺りは一度延期した場合に、次にいつ総会が開催できるか不透明な中で、いつまでも引継ぎができないことになるなど延期の判断が難しいところである。
総会の延期を判断するにしても、予定通り開催するにしても、問題は緊急事態宣言下での理事会の開催である。理事会は理事会でも、年度末の「決算理事会」を開催しないで通常総会を開催することはあり得ない。そこで問題になるのが「緊急事態宣言」の中で、どのように理事会を開催するかである。東京都の「緊急事態措置」では上述の通り、共同住宅は「社会生活を維持するうえで必要な施設」とされているが、「適切な感染防止対策」することが明記され、具体的な防止策として「密集する会議の中止(対面による会議を避け、電話会議やビデオ会議を利用)」と求められている。ここまで明文化された中での、対面による理事会には、抵抗がある役員や組合員も出てくるだろう。
メールによる理事会を考えられる組合もあるだろうが、標準管理規約では認められていない。緊急事態だからという言い訳はあるものの、メールではどうしても一方通行となりがちで、理事が意見をもって協議することが難しくなる。ましてや年度末の決算理事会だから慎重に臨みたい。
そこで緊急事態宣言下において提案したいのは、ビデオ通話による理事会の開催だ。ビデオ通話であれば、タイムリーに意見を出し合い、対面と変わりなく審議できることは明らかだ。現在、ビデオ通話会議システムはテレワークの拡大とともに様々な方式があるが、無償で使えるシステムでは、LINE、Skype、ZOOMなどがある。これらを使うなど工夫して対面によらずに理事会を試行することを推奨したい。規約でビデオ通話での理事会を想定した管理組合はほとんどないと思われるが、まさに緊急事態において、役員や組合員の安全・安心のための対応であることに反対はないだろう。
ビデオ通話による会議を実施するうえでの条件は参加者がスマホか、パソコンか、タブレットを所有しWiFi環境にあることが必須である。これについては既にスマホの普及率が50代以下で9割、60代で7割、70代でも5割(総務省情報通信白書平成30年)と言った現状を考えると、実現できないことではないだろう。むしろ、今までやったことがないので、しり込みする役員もいることから、操作方法など積極的に支援することも重要となる。
いつまで続くか先行きが不透明な環境において、理事会をいつでも対面によらずに開催できる体制を準備しておくことは有効であると考える。