スラブ下の配管を共用部分であるとした最高裁判例
- 事件番号
- 平成9(オ)1927
- 事件名
- 建物共用部分確認等請求事件
- 裁判年月日
- 平成12年03月21日
- 法廷名
- 最高裁判所第三小法廷
- 判示事項
マンションの特定の専有部分からの汚水が流れる排水管の枝管が建物の区分所有等に関する法律にいう共有部分に当たるとされた事例
- 裁判要旨
マンションの専有部分である甲室の床下コンクリートスラブと階下にある乙室の天井板との間の空間に配された排水管の枝管を通じて甲室の汚水が本管に流される構造となっている場合において、甲室から右枝管の点検、修理を行うことは不可能であり、乙室からその天井裏に入ってこれを実施するほか方法はないなど判示の事実関係の下においては、右枝管は、建物の区分所有等に関する法律二条四項にいう「専有部分に属しない建物の付属物」であり、区分所有者全員の共有部分に当たる。
- 参照法条
建物の区分所有等に関する法律2条4項,建物の区分所有等に関する法律11条1項
- 全文
主文
本件上告を棄却する。
上告費用は上告人の負担とする。
理由
上告代理人中村浩紹の上告理由について原審が適法に確定した事実の概要は、次のとおりである。
1 本件建物のa号室の台所、洗面所、風呂、便所から出る汚水については、同室の床下にあるいわゆる躯体部分であるコンクリートスラブを貫通してその階下にあるb号室の天井裏に配された枝管を通じて、共用部分である本管(縦管)に流される構造となっているところ、本件排水管は、右枝管のうち、右コンクリートスラブとb号室の天井板との間の空間に配された部分である。
2 本件排水管には、本管に合流する直前でc号室の便所から出る汚水を流す枝管が接続されており、a号室及びc号室以外の部屋からの汚水は流れ込んでいない。
3 本件排水管は、右コンクリートスラブの下にあるため、a号室及びc号室から本件排水管の点検、修理を行うことは不可能であり、b号室からその天井板の裏に入ってこれを実施するほか方法はない。
【要旨】右事実関係の下においては、本件排水管は、その構造及び設置場所に照らし、建物の区分所有等に関する法律二条四項にいう専有部分に属しない建物の附属物に当たり、かつ、区分所有者全員の共用部分に当たると解するのが相当である。
これと同旨の原審の判断は正当として是認することができ、原判決に所論の違法はない。論旨は採用することができない。
よって、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 金谷利廣 裁判官 千種秀夫 裁判官 元原利文 裁判官 奥田昌道)