「第三者管理者方式」の今後について
縁あって賃貸管理会社の社員向けに「第三者管理者方式」に関する研修の講師を引き受け、このほど講演しました。
「第三者管理者方式」とは、区分所有者以外の第三者に管理者として管理を任せる方式で、従来の標準管理規約で推奨される「理事会方式」とは異なる管理方式です。区分所有法では管理組合に「管理者」を置くことができると規定されていますが、誰が「管理者」になっても問題はありません。ただし、管理者が区分所有者(管理組合)と利益相反関係にある管理会社などが務めた場合、信頼関係が強固にできているうちはよいものの、一度それが崩れたときに、利益相反がより顕著になって、区分所有者のコントロールが効かなくなる可能性があるのです。そのようなリスクがあると知ってか知らずか。昨今では管理者を管理会社などの「第三者」に管理を任せる風潮が出てきました。その背景には、組合員の高齢化などの理由から、理事のなり手不足の問題があります。これは、ファミリータイプマンションであっても、投資型のワンルームマンションにおいても同様です。
一度「理事会」を廃止してしまうと、それまで組合員には重荷になっていた「理事」の負担からは解放されることになります。しかし、解放されることで、管理を「第三者」に任せきりになり、無関心さはさらに助長される可能性があるとは考えられないでしょうか。そして資産が適切に管理されなくなったならば、快適な居住環境がなくなるだけでなく、資産価値としても影響し、負のスパイラルが続いていくことになるのです。このようなシナリオにならないためには、区分所有者が目を光らせ、常にチェックが効く体制を作ることが不可欠なことは言うまでもありません。
折からの「タイパ」(タイムパフォーマンス:効率よく時間を使い、自分の時間を大切にすること)の風潮もあり、新聞や週刊誌などのメディアもこぞって「第三者管理者方式」をこれからの管理組合の救世主や、理想のような論調で煽る傾向すら感じられます。こうしたことが相俟って、社会に安易な「第三者管理方式」に向けた流れが加速することには疑問を感じないではいられません。一時の安楽を求めると、後で手痛いしっぺ返しが来ることを区分所有者は知る必要があると強く感じてやみません。