まちみらい千代田のマンション管理講座で「マンションの水害対策」について講演
9月13日千代田区の外郭団体、公益財団法人まちみらい千代田の令和5年度第1回管理講座で講演を行いました。テーマの「マンションでの水害対策~管理組合にできる現実的対応~」に沿って、昨今の地球温暖化と気候変動により頻発する大規模風水害にマンションではどのように対応すればよいかという視点でお話ししました。
災害と避難の考え方は戸建てとマンションでは若干違います。また、高層階に住む居住者が自分たちは直接影響がないと思っていても、それは大きな誤解です。1階や地階にある電気設備が浸水すると、それだけで生活継続自体が危うくなるのです。こんな誤解も含め、マンションで想定される水害被害に対する現実的な対応はどうすればよいのでしょうか。浸水防止のために、真っ先に思い浮かぶのは「土のう」ですが、「土のう」は重く、積み上げに人手がかかります。それでいて、土のうを積んだとしても浸水時の止水性能は決して高くはない(水の漏れがある)のです。では「土のう」に代わる手段はといえば、「止水板」があります。この「止水板」にも様々なタイプがあって、止水の目的によってタイプを選ぶところから始まります。そして「止水板」の導入後は、浸水が発生する前に組み立てに関する運用を決める必要があります。誰がどのタイミングで組み立てを始めるのかなど決めておかないと、せっかくの「止水板」があっても、対応できなかったなどという笑えない事態にならないとも言い切れません。このように一口に「止水板」運用といっても、対応すべきことは広範囲に及ぶため、予め想定しておかなければならないのです。
他にも台風の接近に合わせ、対応する手順を想定した“タイムライン”をマンション独自に作ることも重要です。マンションでは予め、想定しておかないと災害の際に、うまく対応できないということがよくあります。一例を挙げるならば、浸水発生時や停電で排水ポンプが使用不能になった場合、トイレは使用できなくなります。知らずに使い続けると、低層階で逆流するなど2次被害を起こすことにもなりかねません。だからこそ、マンション独自に災害時の対応マニュアルを作るのです。既に地震対応のマニュアルを作成されているマンションでは、これに水害対応を加えることになります。
何十年に一度といわれる風水害が毎年のようにどこかで発生する現在、私たちはマンションを浸水から守っていかなければなりません。災害が起こらないことが一番ですが、こうしたマンションでの水害対応の呼びかけが、お役に立ててることを願ってやみません。