民泊対応のためのマンション標準管理規約が公開されました
標準管理規約(民泊禁止)改正を考える
標準管理規約が改正され、昨日8月29日公表になりました。6月10日に住宅宿泊事業法が成立し2カ月余りで標準管理規約改正に至りました。昨年3月に全面的な改正がされてまだ日が浅い中で、今回改正されたのは民泊に関する法律(「住宅宿泊事業法)が成立(合法化)し、管理組合での民泊対応が求められたことによります。
1.改正の背景について
民泊の合法化への流れについてはこれまで私のウエブサイトでも何回か取り上げてきましたが、海外からの旅行者の増加とホテル不足の現状、そして2020年東京オリンピックに向け渡航者のさらなる増加が予測されています。こうした社会の変化を受け、住宅を宿泊施設として活用することが決まったものです。
住宅宿泊事業法はマンション居住者のためではなく、国内外の旅行者の宿泊先確保が制定の主な理由です。宿泊先を確保するということですが、民泊には、騒音やゴミ出しなど表面的な問題だけにとどまらず、生活空間へホテル代わりの短期利用者が毎日、入れ替わり出入りすることによる不審感など目に見えない心理的な問題が多いという特徴があります。居住者とのこうしたトラブルを回避するため、法律が審議される過程において、マンション管理組合では民泊を認めるか、認めないかを管理規約で規定することが望ましいとされました。これを受け、国土交通省からは規約制定例としての案が示されることになり、今回の標準管理規約改正に至ったものです。
2.改正する規約内容を考える
公表された標準管理規約では民泊を禁止する場合として「区分所有者はその専有部分を専ら住宅として使用するものとし、他の用途に供してはならない。」の規定に第2項を追加して「区分所有者は、その専有部分を住宅宿泊事業法第3条第1項の届出を行って営む同法第2条第3項の住宅宿泊事業に使用してはならない」。とされました。
禁止規約例が公開されましたが、この内容で本当によかったのでしょうか…? 実はこの規約には大きな落とし穴があることを知らなければなりません。
いわゆる「民泊」には前述の住宅宿泊事業法で新たに規定されたもののほかに、旅館業法「簡易宿所」としてのもの、東京都大田区の様に国家戦略特区法に基づく「特区民泊」がありますが、こうした他の法律での民泊のことは考えなくてよいのでしょうか。民泊利用者は法律や制度によって「お行儀」の良し悪しがあるわけではありません。民泊利用者からみれば宿泊先としてどれも同じです。つまり禁止するならば全ての民泊を禁止しなければ実効性はないのです。
全ての民泊を禁止する規約には第2項に加え、「区分所有者はその専有部分を宿泊料を受けて人を宿泊させる用途に供してはならない。」とする必要があります。実は標準管理規約改正版のパブリックコメントには、「『区分所有者は、その専有部分を、宿泊料を受けて人を宿泊させる事業を行う用途に供してはならない。』」のような規定を置くこともあり得る。」と記載しています。これこそ、全ての民泊を禁止する条文であり、本来であれば、こちらが標準管理規約として掲げられなければならないものと考えます。それを逆にして住宅宿泊事業法による民泊の禁止規定を出すことにより、誤解する管理組合がないと言いきれるでしょうか。昨年11月、国土交通省から「特区民泊禁止規約」が公表された時に、特区以外の地域の管理組合が特区民泊を禁止する規約改定を行った、と言う笑うに笑えない話が現にあるのです。この辺りのことを理解して規約を改正しないと、民泊禁止が不十分という結果にもなるので注意が必要です。
3管理組合としてなすべきこと
合法化された結果、年間180日を超えないという制限は設けられるものの、簡単な届出により、マンション内で「民泊」が営めることになります。現時点で制度運用方法を定める厚生省令や国土交通省令、また施行日については未定ですが、早ければ2018年の早い段階で開始される可能性があります。
民泊を禁止するためには今から管理規約で明確に禁止を定めておくことが、トラブル防止のため有効です。
4.まとめ
民泊が合法化され、開始が迫るなかで管理組合内に不安もあるかと思います。
管理組合の実態に合わせ民泊を禁止するための規約を改定のための相談をお受けしています。民泊に関連して、ご不明な点がありましたらお気軽にご相談ください。
◆標準管理規約改正は、国土交通省ホームページ(http://www.mlit.go.jp/common/001198802.pdf)を参照ください。