2019年3月5日最高裁判決に思う
3月5日、最高裁判所で一つの判決があった。
電力一括受電を特別決議した管理組合での事件。管理組合で電力一括受電するためには、全員が電力会社との契約を一旦解約しなければならない。しかし、この決議に反対する2名の組合員が既存の電力会社との契約の解約を拒み、一括受電ができない状態になった。これに対して、管理組合の専門委員の一人が反対する2名の組合員に対して、一括受電がなされたならば得られるはずの差額分の損害を受けるとして、不法行為に基づく損害賠償請求を起こした。この損害額は9千円。一審、二審ともに原告(修繕委員)が勝ち、損害賠償が認められた。これを不服として2名の組合員が最高裁に上告していたもの。
今日の最高裁の判決では、一審、二審判決を破棄し、損害賠償は棄却され判決が確定した。その理由は管理規約で電力契約の解約を強制することはできない。なぜならば本件は区分所有法の「区分所有者間相互の事項」には当たらず、区分所有者に解約の義務はなく、解約は強制できないというもの。
この訴訟は管理組合が訴えたのではなく、一区分所有者が訴えたもの。もっともと言えばもっともという気もするが、規約を盾に管理組合が物事を強引に進めることはできないということでもあろう。「一括受電」自体、電力自由化の流れの中で過去のものになろうとしているが、管理組合内で賛否が分かれ争いになることはどこでもあり得る。その際に一時の感情論で、反対意見を押し切ったとしても、訴訟になった場合に必ずしも押し切れないということだろう。
今回の事件を通して合意形成の大切さを改めて考えさせられた。今回は原告が区分所有者であったが、これが管理組合であったらどういう結果になったのだろう…。