初めての民泊差し止め命令(東京地裁)
東京都港区のマンションで民泊が始まった後に規約を改正して、「不特定の宿泊を禁止」、「第三者に貸す場合は1か月以上」とする条項を追加して争いになった訴訟で、東京地裁は、民泊の差し止めと弁護士費用の支払いを命じる判決を下したことが報じられた。
この事件は、2015年10月に区分所有者が購入した物件で、民泊仲介サイト最大手のairbnbで募集を行い、外国人が滞在中に夜間のバルコニーでの会話やごみの分別ができていないなど苦情が出たことから、管理組合が規約改正して民泊を禁止したもの。その後、管理会社が民泊の中止を申し入れし、当該区分所有者は「既に予約済みの分だけ営業する」と約束をしたにもかかわらず、その後も営業を続けたことから管理組合が提訴し、民泊の差し止めと違約金としての弁護士費用972,000円の支払いが命じられたというもの。
民泊開始が先で、後から規約改正で禁止された民泊の差し止めを命じる初の判決になった。もっともこれより1年半前の大阪地裁での判決(2017年1月)でも、管理組合の主張が認められたが、その時は既に売却後であったため、差し止め命令にはならず、弁護士費用の支払いだけが認められたものであった。その点今回は、現在も続く民泊で、規約改正前から営業していたとの既得権を認めない判決となって、事業者にとって影響が大きいとの見方もあるが、管理組合側として必ずしも手放しでは喜べない。なぜならば、本件は「民泊募集を止める」と事業者が約束した後に、引き続き営業を続けていたことから、裁判所は「今後も民泊行為をする恐れが高く、差し止める必要性がある。」と判断した経緯があること。さらに本件は2015年当時、違法状態で営業していたものであること。この2点に特徴があって今回の結果になったわけだが、もし2018年6月15日の合法化以降に民泊が開始され、その後に規約改正で禁止された場合には、今回の判決と同じ結果になるとは限らないのではないだろうか。むしろ逆に、既得権を制限する規約改正が無効との判決が出てもおかしくないのではないかと危惧する。
民泊を禁止したい管理組合には、民泊禁止の決議と規約改正が必要であり、これは従来と変わることはない。管理業協会の調査では容認する管理組合は0.3%に過ぎず、8割の管理組合では禁止している。とはいえ、民泊禁止の態度を表明していない管理組合が2割程度あることも気にかかる。こうした組合で先に民泊が始められ、後からトラブルになることがないことを期待するばかりだ。