”軍艦島”の生活を再現したドラマ放映始まる
TBS系列の日曜劇場「海に眠るダイヤモンド」で長崎県端島(通称:軍艦島)を舞台にしたドラマが始まりました。軍艦島は明治、大正、昭和と3つの時代に海底からの石炭採掘で日本のエネルギーを支えた島でした。しかしながら炭鉱の閉山とともに昭和49年3月で有人島の歴史を終えました。ちょうどこの時、中学3年生だった少年が初めて一人旅に出た行き先でもありました。その当時は、まだわずかながらも居住する島民がいて、往年の息吹を感じさせてくれました。狭い路地とそこに続く石の階段。よくここに大勢の人が住んでいたものだと驚いたことが今でも思い起こされます。
ドラマの中ではCGを駆使し、往年の軍艦島での生活が再現されています。ちょうど50年前に軍艦島へ渡った私は、少年ながら感じた衝撃の光景と、ドラマでの島民の生活シーンがオーバーラップし、50年前に誘われます。実によく再現できています。主人公鉄平こと神木隆之介がこの先、ドラマでどう演じていくのか、軍艦島でのシーンにワクワクしています。
軍艦島には日本最古の鉄筋コンクリート(RC)造の集合住宅(通称:30号棟)があります。1階から7階まで吹き抜けと回廊があり、各住戸は6畳一間というあたりに、今では考えられないような劣悪な生活環境です。またRC造にもかかわらず、建具や造作がほとんどすべて木造であるところが、今どきのRC造では考えられない造りになっています。
長らく上陸が禁止の無人島になっていた軍艦島は今では「世界遺産」として登録されるようになり、島の一部ではありますが上陸できるようになっています。30号棟も外から見学ができます。2013年11月40年ぶりに軍艦島再上陸の機会を得、30号棟を目にすることができました。半世紀前の中学生が、今こうしてマンション(集合住宅)というフィールドに関わることになろうとは、想像すらできませんでした。が、何か運命的なものを感じないではいられません。
そんな軍艦島ですが、「世界文化遺産」に登録ということで保護されるかと思いきや、残念ながら現在のところそうはなっていません。特に保存の措置は取られることなく、洋上で風雨に晒されながら劣化が進むばかりになっています。いくらRC造の堅固な建物と言え、崩落が激しく、その危険性から島の内部には立ち入ることができなくなっています。近い将来には大規模な崩落が起きることは時間の問題ではないでしょうか。これはこれで仕方がないことかもしれませんが、今回のドラマ放映をきっかけに軍艦島が多くの人に注目されるとともに、今の姿が後世に残されていくことを期待したいと思います。