パンデミックにマンション管理組合ができること
新型コロナウィルスによる感染拡大が止まらない。世界中で猛威を奮う“パンデミック”への対応は連日報道されているが、集合住宅“マンション”で何をすればよいかを考えたい。
感染拡大防止は「手洗い・アルコール消毒」と「マスク着用」と言われ、もはや常識化している。
また感染拡大の三要素は、「人の密集」「密閉した空間」「近距離での発声・会話」と言われているが、感染拡大防止にはいかにこれらを低減するかということになる。企業ではいち早く、時差出勤やテレワークの推進などの取り組みが広く見られたが、マンション(管理組合)での対応となると、あまり対応が進んでいないのではないかと感じる。
仕事のように収入に直結するわけではなく、学校一斉休校のように日常生活に影響するわけではなく、マンションではどことなく対応が二の次になっていないだろうか。多くの人が「集まって住む」特性があるマンションだからこそやるべきこと、やっておくとよいことをお伝えしたい。
管理組合は主に共用部分の管理を担っている。したがって共用部分での対応が基本となるが、大きく分けてマンションでの対応は次の3点である。
(1)日常管理での対応
(2)理事会・総会運営での対応
(3)感染が発生した場合の対応
(1)日常管理での対応
共用部分と言えば、エントランスやエレベータなど。多くの人が接触することになるので、調達が可能であればエントランスなどにアルコール消毒薬を設置すると居住者の安心は高まるだろう。
ドアの取っ手など多くの居住者が接触する部分を定期的にアルコール消毒することも考えられるが、通常の「管理委託契約」の仕様にはそこまで含まれないため、管理会社との協議が必要になる。また、管理上、日常点検も欠かせない業務だが、点検作業員など外部から人が入ることになるので、入館の際にアルコール消毒をする方法もあるだろう。特に消防設備点検や雑排水管清掃など、専有部分の中に作業員が立ち入る必要がある場合には、作業員のマスク着用や入室時のアルコール消毒など、目に見える形で対応すると安心だ。
管理組合によっては、集会室やゲストルーム、中にはラウンジ、プール、ジム、温泉などの共用施設を有するマンションもある。こうした共用施設で、感染拡大防止三要素に該当する箇所を一時的に利用停止にする方法もある。
(2)理事会、総会運営での対応
①理事会運営
管理組合を運営するために理事会運営は欠かせない。それゆえ、理事会開催の際は会場の換気励行や出席者のマスク着用などの予防手段がある。さらに理事会が長時間化しないように、終了時刻を定め、時間内で終わらせるようにする。懸案事項の審議を優先し、終了時間が押す場合には報告事項は書面報告とすることにより、会議の時間は短縮できる。
標準管理規約(54条)では専有部分の修繕や窓ガラス等の改良工事での「メール決議」を認めているが、これを「災害時等」まで拡大することで機動的な理事会運営ができることになろう。
②総会運営
理事会運営と同様、換気励行、マスク着用の徹底などが基本となる。ほかにも間隔を空けた椅子の配置、総会出席者のためのアルコール消毒薬を設置する配慮などある。それでも人が集まる議場に出席することに抵抗感がある方には、「書面又は代理人」による決議が可能であること(標準管理規約46条4項)を知らせ、議場に出席しない行使を提案する方法もある。この場合、「事前質問書」などで疑問点を表明できる配慮があると、よりていねいな対応となろう。
既に一部自治体では公的会議室の貸出停止により、会場が確保できない事態が発生している。また人数を集めた総会開催がままならない場合なども想定される。この場合は、総会は開催するが出席するのは理事が中心となり、いわば「無観客試合」のようなイレギュラーな運用もあり得るだろう。但し、この場合において、あくまでも「議場出席」を希望する組合員には、それを認める配慮は必要だ。
区分所有法(45条)では「書面又は電磁的方法による決議」を認めているが、その前提は「全員の承諾」であり、現実的ではない。それゆえ、上記での総会開催手法を提案する次第である。
それでも総会開催が困難な場合には、最後の手段としての延期はあり得る。規約で通常総会を「会計年度開始以後『2か月』以内に招集」しなければならない条項に反するが、感染拡大防止という社会的要請を受けた環境下においては、許容されるものと考える。そこで問題になるのが、契約終了期日が近づいた「管理委託契約の更新」だが、マンション管理業協会では、「居住者等の安全や心情」を考慮し、理事会決議での「暫定契約」とし、後日事態鎮静後の重要事項説明会開催を示している。これはあくまでも「管理会社」の擁護のためのガイドラインだが、管理組合としても参考になる。延期の場合、銀行での口座開設(代表者変更)や補助金申請の際に影響を受けることがあるので注意が必要だ。
(3)感染発生時の対応
感染予防に努めたにもかかわらず、マンション内で感染が発生する可能性も否定できない。その場合、管理組合としては保健所の指示に従い、消毒など協力することになる。「自宅待機要請」の場合、イタリアでのメンタル面のケアなど参考になる。また中国や香港などでは「マンション封鎖」が発生し、日本でも今後もないとは断定できないが、その対応については今回の、提案とは切り分け、別の機会としたい。
★マンションに深く関わる者として、今回の騒動の早期終息を強く願うばかりだ。