マンション建替え条件緩和の動きへの対応
老朽化マンションの増加が加速しています。令和2年では築40年超は103万戸が20年後には405万戸になるとの数字(国土交通省「築後30年、40年、50年超の分譲マンション調査」)で示されています。こうした背景がありながら、建替えが完了したマンションは全国でわずか295棟(建築中を含み、被災マンションを除く:国土交通省調査 令和3年4月1日現在)に過ぎません。それには、マンションでの合意形成がなかなかまとまらず、これまで先送りされてきたという背景があるのです。
建替えには区分所有者の5分の4(80%)の多数の賛同を得なければならないという条件があります。これを4分の3(75%)に緩和しようとの動きが出ています。法律を作るうえで調査、協議のうえ法務大臣に諮問する機関である法制審議会に2022年度にも諮問することが先日報道されました。
条件の緩和に国が動き出したことは建替えへのハードルを一段下げることにはなりますが、現在から5%下げただけでは問題は解決しないだろうと私は考えています。建替えとなれば解体と建築の数年は転居を強いられます。またよほど特殊な好立地でもない限り、相応の追加費用負担も発生するのが現実です。高齢化マンションには老若男女、様々な人が居住し、世代や生活環境、金銭感覚や価値観など異なる中での「建替え」への合意は難しいと言わざるを得ません。さらには扱いを一歩間違えると、建替えを推進したい派と今まで同様に長年慣れ親しんだ所に居住したいという二つの派にマンション内が分断されてしまう恐れすらあるのです。
こうならないためには、条件の緩和の有無にかかわらず、自分のマンションの将来をどうするべきかという意識を区分所有者が持って主体的に行動するほかに道はないでしょう。まずは「建替え」ありきではなく、広い意味でのマンションの「再生」を一緒に考える機会を持って、議論を始めることが大事な一歩ではないでしょうか。